パラリンピックとアーツ スタディーグループ第2回会合

第2回会合 2016年5月30日
舞台芸術分野の実践事例

「エイブルアート・オンステージが残したもの」
愛知大学文学部メディア芸術専攻准教授 吉野さつき

エイブルアート・オンステージは、2004年度から2009年度まで明治安田生命の社会貢献プログラムとしてエイブル・アート・ジャパンが企画制作をしたものである。その活動は、公募型の「活動支援プログラム」で選ばれた団体が作品をつくるなどの活動を行って、各地域での公演の後、「コラボ・シアター・フェスティバル」で成果発表を東京で行うものと、「飛び石プロジェクト」という国際交流企画があった。いずれも、障がいのある方々とアーティストがワークショップの過程を経て、障がいや芸術表現に対する様々な考えを擦り合わせ調整しながら活動を行った。活動現場では、移動や宿泊にともなう困難、それに対する介助や経済的問題、芸術表現としての広報宣伝の難しさ、精神的ストレスの軽減など多くの課題が見られた。
障がいをどう捉えるかは常に問われる問題である。葛藤や矛盾を避けたり、取り繕ったりしないこと、美しく感動的なストーリーに仕立て上げないことが重要である。パラリンピックがあるから支援が必要ということではなく、本当に必要な支援が何であるか、様々な状況にいる当事者に目を向けた制度が出来ているかを、問い直していく必要がある。

IMG_4046.JPG報告をする吉野さつき氏

「ヨコハマ・パラトリエンナーレとスロームーブメント」
スローレーベル ディレクター 栗栖良依 

ヨコハマ・パラトリエンナーレは、横浜市の観光施設「象の鼻テラス」で開催される、障がい者とプロのアーティストのコラボレーションによる現代アートのフェスティバルである。横浜市文化観光局と健康福祉局が共に携わり、2014年、2017年、2020年の全3回の開催による、発展進行型フェスティバルである。2020年以降は障がい者が「ヨコトリ」で活躍する社会、ゆくゆくは障がいという言葉がなくなる社会を作ることを目指している。
活動を通して浮上した課題、たとえば情報伝達の難しさ、移動や宿泊の物理的ハードルなどを乗り越えるために、市民参加型のパフォーミングアーツプロジェクト「スロームーブメント」を立ち上げた。立ち遅れている、障がい者が表現者として舞台に立つ環境づくりのために、アカンパニスト(伴奏者)とアクセスコーディネーターを育成して、そのノウハウを構築していこうと、試行錯誤を続けている。東京、横浜での公演では、裾野の広がり、スタッフのスキルアップなどの成果が見られ、企業とのコラボレーションが進んだ。2016年冬に完成する新豊洲Brilliaランニングスタジアムでは、障がいのあるパフォーマーのトレーニングプログラム等を実施していく計画である。2020年東京パラリンピックの開会式や文化プログラムなどで活躍する人材を輩出していきたいと考えている。

IMG_4047.JPG報告をする栗栖良依氏