パラリンピックとアーツ スタディーグループ第4回会合

第4回会合 2016年8月9日
「ロンドン文化オリンピアードと障がい者アーツ」

ロンドン文化オリンピアードの全英的な展開と、障がい者の参加
ニッセイ基礎研究所 研究理事 吉本光宏

オリンピックの基本原則にはスポーツと文化と教育の融合が唱えられており、オリンピック・パラリンピック大会に際しては、並行して文化プログラムが催される。英国では、北京大会終了後の2008年9月からロンドン文化オリンピアードが4年間にわたって行われ、最後はフィナーレとしてロンドンオリンピック開幕の4週間前からパラリンピック大会終了まで12週間、大規模なフェスティバルが実施された。地方都市も含め全国で展開され、参加者数4,300万人の大規模なものであった。この文化プログラムは、英国の誰もがロンドン大会に参加する機会を提供したが、英国の文化を発信するだけでなく、世界中のアーティストにもチャンスとなるものであった。今日まで継続されている事業もあり、芸術活動の質的向上などと共に、オリンピックのレガシーと言える。
障がい者アーツのプログラムとしては、「アンリミテッド(Unlimited)」とサウス・イースト地方での「アクセンチュエイト(Accentuate)」があった。「アクセンチュエイト」はプロジェクトとそれを支えるスタッフとの両方に障がい者が参加し、障がいに対する社会の見方を変えること、芸術やスポーツや多様な分野で障がい者のアクセシビリティを高めることを目指した活動であった。
ロンドン大会は、地域の芸術文化活動に今後参加しようとする若者が増えるなど、英国に前向きな変化をもたらした。特にパラリンピックの影響が大きく、障がい者に対しての見方の肯定的な変化や、尊敬の念の高まりがみられる。これには障がい者アーツのプログラムも強く影響している。
2020年の東京大会には世界が注目している。財源などの課題もあるが、障がい者アーツを含め、文化プログラムの充実に取り組んでいかなければならない。

「アンリミテッド」のコンセプト、実施状況、インパクトと、大会後の発展
同志社大学創造経済研究センター 特別研究員(PD)
NPO法人都市文化創造機構 事務局長 川井田祥子

「アンリミテッド」はロンドン大会の文化プログラムである文化オリンピアードの主軸の1つの、障がいのあるアーティストの芸術活動を支援するプログラムである。障がい者の高品質な作品制作を国内外で推進すること、文化芸術の分野での障がい者の関わりと雇用を増やすこと、障がい者の平等をより広く促進することを目的に、活動が行われた。公募によってプロジェクトが採択され、制作された作品が「ロンドン2012フェスティバル」(文化オリンピアードのフィナーレ)などで披露された。ロンドン大会後は、アーツ・カウンシルなどの助成により2020年までの継続が決定しており、毎年公募が行われることが発表されている。
「アンリミテッド」の活動は、アーティスト達にとって、制作スキルの向上やネットワークの広がりなどの成果がある一方で、今後いかに継続していくかなどの課題も見られる。現在、「アンリミテッド」の参加アーティストと共同制作中の、義足の女優&ダンサー・森田かずよ氏が述べているように、文化プログラムは批判やネガティブなインパクトがあることがわかっていても、行うべきであるし、障がい者の雇用をいかに生み出すかという長い目でみて展開していくことが大切ではないかと考える。「アンリミテッド」の活動は、一過性のイベントとして終わらせず、継続することが重要であり、社会の障壁がなくなるまで続くであろう。

IMG_4183.JPG参加者とディスカッションする講師

IMG_4176.JPG会場の様子