パラリンピックとアーツ スタディーグループ第5回会合

第5回 2016年9月8日
「舞台芸術の鑑賞支援」

障がいのある人の舞台鑑賞サポートの広がり~ビッグ・アイの取り組みから
国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)事業プロデューサー 鈴木京子

国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)は2001年に厚生労働省により、障がい者の「完全参加と平等」の実現を目的に、車いすの座席を用意できる多目的ホールや、バリアフリーの宿泊室を備えた施設として堺市南部に設立された。現在はビッグ・アイ共働機構が運営し、障がい者の芸術文化活動や国際交流による社会参加の促進を目指して事業を行っている。公演鑑賞サポートとして、車いす利用者に対しては、その数に応じた車いす席の設置や優先入場、聴覚障がい者に対しては、リアルタイム字幕、受付や案内や司会の手話通訳、補聴器貸し出し、また、視覚障がい者に対しては、点字や拡大文字のパンフレットの用意、補助犬の同伴席設置、副音声ガイドによる情報提供などを行っている。「知的・発達障がい児(者)に向けた劇場体験プログラム」の企画や特別鑑賞室の設置などを行い、知的・発達障がい児(者)の鑑賞支援も行っている。
障がいは「できないこと」ではなく、「ニーズ」と捉えることができる。2020年パラリンピックでは多くの文化プログラムが行われることになるが、この「ニーズ」がどれだけ解決され、どれだけの人がプログラムに参加できるかが、オリンピック・パラリンピックの成功に繋がり、形のあるものとして残していけることになるのではないか。今後、パラリンピックサポートセンター研究会と我々とで舞台芸術の調査を始める予定である。「ニーズ」を可視化することで、少しでも課題解決に向けていきたいと考えている。

シアター・アクセシビリティ・ネットワークの活動~聴覚障がい者への支援
NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク 理事長 廣川麻子

シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)は、2012年12月に設立され、「みんなで一緒に舞台を楽しもう」を合言葉に、障がい者の観劇サポートの活動をする団体である。聴こえなくても、見えなくても、観劇を楽しめるように、台本や音声ガイドの貸し出し、手話通訳付き公演、字幕付き公演などに向けて劇団や劇場へ働きかけを行っている。「支援」に至るまでの関係者との調整等は複雑で、様々な場面で困難が生じ、諦めることも多いが、適切な支援の形を研究しながら、支援者と支援を受ける当事者双方の意見を踏まえて取り組んでいる。また情報獲得の場が少ない障がい者のために、ウェブ上に「アクセシビリティ公演情報サイト」を開設し、定期的に発行する無料メールマガジンと共に、サポート付き公演の情報発信に努めている。しかし、聴こえない人が本来求めている手話通訳付きや字幕付きの公演の情報は、非常に少ないのが現状である。また、TA-netでは、それらのサポート付き公演の多い英国の視察後、2016年7月に「舞台手話通訳付き公演」を行った。課題として手話通訳の難しさが残った。
2014年に批准された「障害者の権利に関する条約」の第30条にあるように、障がい者の文化的生活の確保が社会に求められ、観劇サポートも合理的配慮であるとの考え方になってきている。2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、試合や関連イベントなどに手話や文字による情報提供が保証され、聴こえなくても主体的に参加できることを期待している。多言語化の中に手話通訳、日本語字幕も含めてほしいと願っている。

IMG_4227.JPG参加者とディスカッションする講師

IMG_4217.JPG報告中の講師