パラリンピックとアーツ スタディーグループ第10回会合

第10回 2017年3月14日
「障がい者の舞台芸術表現・鑑賞に関するケーススタディ調査報告」
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愛知大学文学部 吉野さつき

<エイブルアート・オンステージ>
 2004年から2009年の6年間にわたって、障がいの有無や種別を超えて多様な人々が参加し、障がいのある人の芸術表現の可能性を広げ、新しい舞台芸術のあり方を試行する事業として実施された。公募型の活動支援、フェスティバル、国際交流の3つのプログラムを通じて、様々な種が撒かれ、活動や出会いをきっかけに、アーティストや実践団体が今日まで育ってきている。
 「障がい」を社会モデルで多義的に捉え、より多様な人たちによるコミュニティの在り方と舞台芸術の多様性を結びつけ、発展させたことが現在につながっている。

<音遊びの会>
 神戸大学の大学院で音楽療法を学んでいた大学院生が新しい即興音楽の可能性に気づきエイブルアート・オンステージ(2005年度)に応募したことを機に結成された音楽バンド。小さな実験的なプロジェクトを試みる集団が、プロのミュージシャンや障がいのある子どもたちとその親など、多様な人たちと出会い混ざり合った結果として、新しい音楽の地平を目指して活動する団体が生まれ育った。

<まあるい劇場>
 劇団こふく劇場の活動から派生し、2006年度のエイブルアート・オンステージ参加を機に活動を開始した。障がいのある参加者の一人が代表を務めることになり、自主的に活動する意識がより一層高まった。当初は既存の劇団という母体から生まれたものの、徐々に独自に育ち、当初の母体であった団体とパートナーシップを組める状況になった。

<循環プロジェクト>
 コンテンポラリーダンスの振興を図るNPO法人DANCE BOXがエイブルアート・オンステージ(2007年度)に参加。障がいのある人たちの動きに見られる従来のダンサーとは違ったダンスの魅力を原動力に、コンテンポラリーダンスの分野で活動を継続している。

 今回の調査対象となった以下の3団体以外も、6年間のエイブルアート・オンステージ参加を契機として、ケースごとに様々な経緯をたどり、それぞれに発展している。さらに先に進む場ができることを期待したい。

東京藝術大学 社会連携センター(COI拠点)村田博信

<デフ・パペットシアターひとみ>
 1981年から公演活動を開始した長い歴史のあるプロフェッショナルの人形劇集団。ろう者と聴者の共創によりクリエイティビティに優れた作品を生み出していること、実行委員会形式により全国の各地域で協力者が自主的に関わり継続的な公演活動を実現していること、情報発信に優れ多くの企業や団体から共感を得て継続的に支援を受けていることなどが特徴。

<ゴールドコンサート> 
 日本バリアフリー協会が2003年より毎年行う全国規模のコンクール形式の障がい者コンサート。高いクオリティとエンターテインメント性を担保し、企業連携に優れ、資金のみならず人的な協力も上手に受けている。支援側の企業で働く社員のイベント参加が、企業にとっても社員教育の場となりうる点もあり、示唆に富む活動である。

<公益財団法人キリン福祉財団>  
 キリンビール株式会社創立75周年を記念し、福祉目的専門の財団として設立された。計画事業(中長期的・非公募)と公募事業(短期的)の2つで、支援事業に取り組んでいる。

<対策案>
以上の事例調査からグッドプラクティスと課題を抽出し、以下の3点を対策案として挙げた

・人材育成に資する(人・場・金・情報がワンストップに集約された)プラットフォームの形成

・プル型・プッシュ型双方の情報発信の工夫と情報受発信のシステム化

・支援機関との連携、有効な支援授受のための体制の構築

IMG_4833.JPG会場の様子