パラリンピックとアーツ スタディーグループ第11回会合

第11回 2017年5月16日
「映画の鑑賞支援~セクターを超えた体制作りと技術開発」

 1. 映画業界から始まる鑑賞支援の最新技術
NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター 理事・事務局長 川野浩二 

 メディア・アクセス・サポートセンター(以下MASC)は、2008年に設立した映画鑑賞のバリアフリー化に取り組むNPO法人。

 日本の映画業界は、複数の省庁によって管轄され動きが取りづらい、映画ビジネスがシビアな状況に置かれ新たな設備投資が困難などの理由から、劇場設備に頼った映画のバリアフリー視聴を拡大していくことに、そもそも限界があった。そこで、エンジニアとしての私自身の知見を活かして、音響通信技術による解決を模索することとしUDCastを開発した。

 映画業界に向けては、新しい音響通信技術の位置付けを単なる「バリアフリー化」ではなく、「インバウンドという市場チャンス」と組み合わせて提案し、「多言語対応・多チャネル化」という新しい表現方法の可能性として、魅力的に捉え直してもらった。 

 UDCastの仕組みは、音声の解析データから同期情報を得られる音響通信技術による。事前に音声データをサーバーからダウンロードしておけば、劇場設備に頼ることなく、電波状況にも依らず、不特定多数の人々が同一空間で多言語で、映像を楽しむことができる。実証実験を経て、多くの映画館で利用できるようになった。対応する映画の本数は昨年比2桁以上に拡大している。

 2013年に超党派の議員連盟「障害者の芸術文化振興議員連盟」が設立され、以前に比べると行政サイドの対応が前進してきたことも、追い風となっている。

 UDCastはその特性上、映画館以外でも大人数の集まる会場への導入・展開が可能だ。2020年のオリンピックパラリンピックに向け、多くの訪日外国人にも是非使ってほしいと思う。

 2.  コメント
毎日新聞デジタルメディア局 岩下恭士 

 従来日本でバリアフリー映画というと、障がいをテーマにしたような作品の、福祉がらみの上映会が多かった。しかし、障がい者にとって障がいは日常であって珍しいものでも感動的なものでもない。いま一般に流行っているものを、皆と同じように楽しみたいという気持ちがある。そこは誤解してほしくないと思う。

 UDCastのおかげで、普通の映画館で皆と同じように映画を見ることができるようになった。とても画期的なことだと思う。DVDも音声ガイドモードが再生と同時に自動的に始まるようになるなど、改善が見られてありがたい。いろいろと進んできたなと思っている。

IMG_4864n.JPGディスカッションの様子