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第7回 ワークショップ

第7回 2015年3月5日

「パラリンピックに於ける医学的支援」

講師による説明.JPG

写真:会場の様子

パラリンピックでは出場選手が障害を抱えているということで、健康管理には細心の注意が必要となる。ここ10年ほどのパラリンピック大会を振り返ってみても、ほぼ毎回の大会で健康面に問題の生じる選手がいる。また、現在は選手が各自任意の医療機関で診断書を取っているが、今後は障害者の専門医が一元的にチェックできるような体制を整えていくべきである。また、数値だけでなく個々の選手の状態をしっかりと把握することが大事であり、そのような専門家の育成が急務である。

スライドを説明する講師.JPG

写真:車いすバスケットを例に専門知識の重要性について説明する講師

競技のクラス分けについては時代とともに変化してきているが、現在はIPCコードというクラス分けコードに従って行っている。競技によってクラス分けの方法は細かく規定されており、例えば上肢や下肢それぞれの可動範囲の程度などによってクラス分けを行うなどしている。しかし、条件・状況によって障害の程度が変化する場合はどうするべきか、あるいは、IPCの方針としてメダルの価値を高めるためにクラス分けを大まかにしてきているが、そこで拡大する選手間の有利・不利の問題はどうするかなど、様々な困難がある。

アンチ・ドーピングは、禁止薬物や禁止されている方法が細かく規定されている。年々罰則が厳しくなる傾向にあり、選手当人はもちろん、使用に関わったコーチや競技団体に対しても罰則が適用されるようになってきている。ドーピング検査は手続きが詳細に決められており、手続きを厳守する必要がある。また、常用の治療薬が禁止薬物に該当している場合もあるため、その際は大会に向けて薬を切り替えるか、使用特例(TUE)をもらうなど対応が必要である。

会場での質疑応答.JPG写真:質疑応答の様子

パラリンピックの今後の課題としては、重度障害の競技種目の開発による社会参加の促進、女性の更なる参加などが挙げられる。競技性は高まる傾向にあるが、彼らの活躍によりIPCのモットーである「Spirit in Motion 」を実現してほしい。また、近年は障害者をinpairmentと呼ぼうという流れになっている。

2015年1月30日(金)、「日韓パラリンピック・セミナー 2018平昌・2020東京大会に向けて」を早稲田大学 小野梓記念講堂にて開催いたしました。

基調講演

開会あいさつで日本財団 笹川陽平会長は、障害者スポーツの分野で日本と韓国が手を携えることの意義を説き、両国で開催されるパラリンピック大会の成功に向けて、両国の関係者間で活発な議論が交わされることへの期待を述べました。

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 日本財団 笹川会長

基調講演では、韓国パラリンピック委員会のキム・ソンイル会長が、平昌大会の開催を障害者に対する国民の認識を深めパラリンピック・ムーブメントを拡大するチャンスととらえてプロジェクト計画を推進していること、国内のみならず新興国に対する支援や国際交流を推進していることなどを紹介し、スタジアムを観客で一杯にし、持続可能なレガシーを創出できる大会にしたいと述べました。

日韓パラリンピックセミナー KPC金会長.JPG

KPC金会長

また、日本パラリンピック委員会の鳥原光憲会長による基調講演では、東京でパラリンピック大会を開催する意義として、日本の障害者スポーツの新時代に向けた改革の起爆剤になること、また、インクルーシブな社会の変革を促す契機となることが挙げられました。鳥原会長は、「チケットを完売し全競技で満員の観客」を得られるよう国民が連帯すること自体が日本の将来への重要なレガシーになるという考えを披露しました。 

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JPC鳥原会長

1セッション「パラリンピック大会が残したもの~過去の大会の遺産と教訓」

モデレーター:藤田 紀昭 同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科教授

パネリスト:

小倉 和夫 日本財団パラリンピック研究会代表             

        「1964東京大会が残したもの」

Chun, Hea Ja(チョン・ヒェ ザ) 順天郷(スン チョン ヒャン)大学スポーツ科学科教授

        「1988ソウル・パラリンピックが障害者スポーツに及ぼした肯定的影響とパラリンピック・レガシー」

中森 邦男 日本パラリンピック委員会事務局長

        「1998長野パラリンピックとパラリンピック運動の発展」

Hong, Suk Man(ホン・ソク マン) 済州特別自治道庁 パラリンピアン(陸上)

        「パラリンピックが私にもたらした意味」

河合 純一 日本パラリンピアンズ協会会長、日本スポーツ振興センター・スポーツ開発事業推進部研究員、パラリンピアン(水泳)

        「パラリンピアンとしての歩みを振り返って」

第一セッションのサムネイル画像

第1セッション:写真左から小倉、Chun、藤田


第一セッション河合さん

第1セッション:写真左から河合、中森、Hong

2セッション「パラリンピック大会に期待するもの~2018平昌、2020東京の両大会に向けて」

モデレーター: 間野 義之 早稲田大学スポーツ科学学術院教授

パネリスト: 平田 竹男 早稲田大学スポーツ科学学術院教授

                                     「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて」

                  Park, Jong Chul(パク・ジョン チョル) 韓国パラリンピック委員会生活体育部長、元パラリンピアン(パワーリフティング)

                                     「競技環境および大会運営に関する現状と課題」

                  田口 亜希 日本パラリンピアンズ協会理事、パラリンピアン(射撃)

                                     「日本のパラリンピック選手強化の現状と課題」

                  Choi, Seung Kwon(チョイ・スン グォン)  龍仁(ヨンイン)大学特殊体育教育科教授

                                     「パラリンピックに対する社会の関心喚起と大会の成功に向けて」

                  落合 博 毎日新聞社論説委員

                                     「社会の関心喚起と大会の成功に向けて」

第2セッション第2セッション:写真左より田口、Park、落合、平田、Choi、間野

 


早稲田大学スポーツ科学学術院院長 友添秀則教授による閉会あいさつで、5時間にわたる熱気あふれるセミナーの幕を閉じました。

セミナー閉会挨拶の様子.JPG

>セミナーの様子について日本財団HPにて取り上げていただいております。



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日本財団パラリンピック研究会は、1月30日(金)に早稲田大学スポーツ科学学術院と共催で、早稲田大学小野梓記念講堂にて、「日韓パラリンピック・セミナー 2018平昌・2020東京大会に向けて」を開催します。プログラム詳細は以下のとおりです。セミナーには手話通訳もつきます。皆様のご参加をお待ちしております。

日韓セミナー.JPG日韓セミナー(韓).JPG
日韓セミナー案内(和、韓).pdf

たくさんのお申込みありがとうございました。定員に達しましたので、締切とさせていただきました。

2014年12月19日(金)、国際シンポジウム「国際交流とスポーツ外交」を青山学院大学にて開催いたしました。2020年に東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、スポーツがいかに人を育て、社会や国家の発展に貢献しているかを検討し、また、スポーツを通した国際交流・文化外交-「スポーツ外交」について論じました。

青山大学国際シンポジウム登壇者集合写真.JPG

写真:セッション登壇者による集合写真

 セッション1「国家・社会の発展とスポーツ外交」

アンドレ・コヘーア・デ・ラーゴ氏(駐日ブラジル大使)

「2014年ワールドカップと2016年リオデジャネイロ・オリンピックに期待したもの、されるもの」

2014年のFIFAワールドカップでは、環境に配慮したインフラを提案するなど、ブラジルがサッカーだけの国ではないことを世界に示した。2016年のリオ五輪開催により、リオ旧市街および低開発地域の街並みや交通網の整備などの、長期的な開発計画を進めている。スポーツ外交は、国のイメージを広めることに役立ち、スポーツの持つソフトパワーが他国の人々をひきつけ、その国の生活様式の魅力を伝え、政治的・文化的に大きな力となる。

金雲龍氏(元韓国オリンピック委員会副会長)

「ソウルオリンピック・パラリンピックとピョンチャンオリンピック・パラリンピックにおけるスポーツ外交」

スポーツ外交は政治に大きな力を及ぼす。1988年のソウル五輪では、南北朝鮮の統一チーム結成は叶わなかったが、ソ連と中国を始めとする社会主義圏の参加を得ることができ、国交樹立の契機となった。東京は、財政能力やインフラの面でも有利な環境を持っており、2020東京五輪は、外交にも役立つ機会になるだろう。

池井優氏(慶応義塾大学名誉教授)

「近代日本とスポーツ交流―オリンピックと野球を中心に」

明治以降、外来スポーツが導入されるなか、野球は広く浸透し、外交と親善の手段として機能するようになった。1964年の東京五輪は、戦後復興のシンボルとして、独立回復と国連加盟にまさる効果を持ち、OECD加盟に必要な信頼を獲得するのにつながった。2020東京五輪は、エコ五輪としての発信、文化活動推進、日本経済活性化等の機会として期待される。

討議

韓国の経済発展を促進し国民に自信を生んだソウル五輪、持続可能な五輪を目指すリオ五輪、多極化の中に置かれる五輪について、韓国、ブラジル、日本の立場からそれぞれのコメントがなされた。

 

セッション2「スポーツが育てる人と社会」

写真 青山大学国際シンポジウム第2セッション.jpg

写真:第2セッションの様子

 

有森裕子氏(スペシャルオリンピックス日本代表、元マラソンランナー)

「よろこびを力に-わたしの社会活動」

湾岸戦争の最中に行われたマラソン大会において、スポーツは「平和な戦い」を示すことができるのではないかと考えた。バルセロナとアトランタでメダルを受賞したことが、自ら社会的な活動を行っていく契機となった。カンボジアでの親善マラソン大会参加を皮切りに、スポーツを通した国際活動に深く関わり、NPO法人の設立に至った。人々を変え、また自分自身の意識も高め続けてくれるのが、スポーツの持つ力である。

写真 講演をする有森裕子さん.JPG写真:スペシャルオリンピックス日本代表 有森裕子氏

 梁世勲氏(元在ノルウェー韓国大使)

「スポーツ外交と国際交流-韓国の事例」

韓国での五輪開催は、それまで国と国民が悩んできた悲しみと弱みを克服する原動力になった。五輪を成功に導くためには、安全の確保が第一条件となる。ソウル大会では東西両陣営の参加が実現し、その後、韓国は共産国家と次々国交樹立に成功した。五輪を通して、韓国は世界全体を舞台とする国際交流ができる国になった。政治的対立を緩和する無言の力を持つことはスポーツの大きな魅力である。東京五輪が世界平和と人類福祉を具現する機会になることを心より願う。

小川郷太郎氏(全日本柔道連盟国際関係特別顧問)

「国際社会における柔道の役割」

柔道はいまや国際的スポーツである。国際平和や友好親善の場でも有効な手段として活用されており、世界の子供たちに柔道を通して交流の場を与えるNPO法人も存在する。日本の柔道の技術レベルは世界一だが、柔道人口は減少している。徳育・知育・体育といった面に注目しての青少年への普及が必要と考える。国際的な発信力を強化することで、柔道による国際交流も促進するだろう。メディアには、バランスの良い報道を願う。

田口亜希氏(アテネ、北京、ロンドンパラリンピック 射撃日本代表)

「パラリンピックの意義」

後天的に障がいを持った後に射撃を始め、スポーツを通して喜びを見出している。今の日本では、2割程度の人々がバリアフリーを必要としている。スポーツ面の充実だけではなく、障害者がどこへでもアクセスできる環境の整備が望まれる。多機能施設がなぜ必要なのかを一般社会が知ることにより、「おもてなし」の実現が可能となるだろう。パラリンピックのバリューである、「勇気」「強い意志」「インスピレーション」「平等」を感じてほしい。

写真 青山大学国際シンポジウム田口亜希さん.JPG写真:アテネ、北京、ロンドンパラリンピック 射撃日本代表 田口亜希氏

討議

参加することに意義があるのか、或いは、競技性を追求すべきなのかについての問いに対し、オリンピアンとパラリンピアンから、五輪大会は、選手が自分の能力を最大限に生かす場であり、当事者がどのように考えるかが大事であるとのコメントがなされた。

 

セッション3 総合討論

アスリートのキャリアパス、オリンピックとパラリンピックの在り方、五輪大会と平和、柔道の国際化、日本社会におけるスポーツの価値、スポーツが社会にもたらす貢献などについて、質疑応答が交わされた。

写真 青山大学国際シンポジウム小倉代表.JPG写真:日本財団パラリンピック研究会代表 小倉和夫

写真 青山大学国際シンポジウム土山實男さん.JPG写真:青山学院大学教授、同副学長 土山實男氏

第4回 ワークショップ

第4回 2014年12月11日
「情報アクセシビリティに関する現状の課題と、パラリンピックに向けた展開」

情報通信技術の国際的標準化に向け、国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門が、携帯電話の無線インターフェイスおよび電話回線によるデータ通信の標準化・共通化ルール策定などに取り組んでいる。国内では、標準開発機関として政府に認証された情報通信技術委員会が、対処方針を総務省に提案し、審議を行っている。

具体的な施策と進捗状況を紹介する。聴覚障害者向けの電話リレーサービス、緊急通報用インターフェイスなどはすでに実用化されており、汎用化に向けガイドラインの策定が進められている。自動音声認識と翻訳を一体化した自動音声翻訳アプリについては、成田空港でサービス運用が行われている。将来的には自動翻訳技術を用いたコミュニケーションが世界中で可能になるが、少なくともアジアでは2020年までの実用化が目標。視覚・聴覚障害者に有効なIPTVについては、国内各メーカーがすでに商品化し幅広く活用されているが、さらに低コスト化に向けた実験などが進められている。ITUのアプリのコンテストなどを通して国際的にも活用が促進されている。

情報アクセシビリティ向上には低コスト化が重要。日本ではコストが高いためテレビ番組の字幕・手話通訳サービスが進んでいない。遠隔地での第三者による、あるいは、障害当事者による字幕作成で、低コスト化を図り、IPTVの活用サービスを広げたい。情報アクセシビリティ向上が高齢化社会に向けたニーズとして認識されて、社会制度によるサポートを得られれば、サービスは普及する。

前出の電話リレーサービスは聴覚障害者のためのサービスだが、手話を使う人は聴覚障害者の2割弱に過ぎない。また、視聴覚障害者の情報アクセス・デバイスとして点字ディスプレイが市販されているが、視覚障害者で点字を読める人は1割程度。点字を使えない多くの視覚障害者はスクリーン読み上げソフトを利用する。点字でも、状況は複雑で、例えば聾盲者(視覚聴覚障害者)が盲ベースの場合は指点字、聾ベースの人は触点字と別れる。障害の種類・程度により、障害者のコミュニケーション手段は多様なので、それぞれのニーズに合った情報アクセシビリティ・サービスが必要である。

日本財団パラリンピック研究会は、青山学院大学国際交流共同研究センターとの共催で、国際シンポジウムを開きます。

開催日:2014年12月19日(金)13-00-18:00
場所:青山学院大学 総研ビル12階大会議室(受付:総研ビル11階)
参加費:無料

講演テーマ: 国際交流とスポーツ外交

開催趣旨:
2020年に東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、スポーツがいかに人を育て、社会や国家の発展に貢献しているかについて考え、また、スポーツを通じた国際交流・文化外交 ―「スポーツ外交」について討論します。

使用言語:日本語・英語(同時通訳付き)


セッション1 国家・社会の発展とスポーツ外交(13:00〜14:30)
「2014年ワールドカップと2016年リオデジャネイロ・オリンピックに期待したもの、されるもの(仮)」
 アンドレ コヘーア・ド・ラーゴ(駐日ブラジル大使)
「Sports Diplomacy in the Seoul and Pyeong Chang Olympic Games」
 金雲龍(元国際オリンピック委員会副会長)
「近代日本とスポーツ交流--オリンピックと野球を中心に」
 池井優(慶應義塾大学名誉教授)

司会:土山實男(青山学院大学国際交流共同研究センター所長)


セッション2 スポーツが育てる人と社会(14:45〜16:45)
「Sports Diplomacy and International Exchange- the Case of Korea」
 梁世勳(元在ノルウェー韓国大使)
「よろこびを力に--わたしの社会活動」
 有森裕子(スペシャルオリンピックス日本代表、元マラソンランナー)
「国際社会における柔道の役割」
 小川郷太郎(全日本柔道連盟国際関係特別顧問)
「パラリンピックの意義」
 田口亜希(アテネ、北京、ロンドンパラリンピック 射撃日本代表)

司会:小倉和夫(日本財団パラリンピック研究会代表・青山学院大学特別招聘教授)

セッション3 総合討論(16:50〜17:50)
金雲龍、池井優、梁世勳、有森裕子、小川郷太郎、田口亜希、土山實男
司会:小倉和夫
敬称略


お申し込みはこちらからお願いします。
http://www.jripec.aoyama.ac.jp/report/symposium/sym0040.html

IBSAブラインドサッカー世界選手権

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 2014年11月16日から24日にかけて、国立代々木競技場フットサルコートにて、IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)ブラインドサッカー世界選手権が開催された。この試合のうち、18日開催の予選リーグ(日本対モロッコ)、24日開催の5位決定戦(日本対パラグアイ)、決勝戦(ブラジル対アルゼンチン)を、本研究会研究員が観戦した。

 コートの規模はフットサルとほぼ同じで、1チーム5名という点でもフットサルと似ている。このようなコートの狭さやチームの人数だけでなく、ファウルの基準が緩いという点も加わり、通常のサッカーよりも選手同士の距離が近い、肉弾戦的な競り合いが特徴的だった。ブラインドであるため長いパスがなく、通常のサッカーと比べてパス回しよりもドリブルの技術が重要になる印象を受けた。

 会場内には、障害者の観戦を支援する「リレーションセンター」が設けられており、実況中継を行う音声ガイド、会場の様子を確認するための触地図、タブレット端末を用いた筆談用設備、補助犬用トイレが用意されていた。

 会場内にはブラインドサッカーの体験コーナーが設けられていた他、24日には試合会場の隣で「新しい世界デイ」と称したイベントが開催されていた。ここでは、ブラインドサッカー以外の障害者向けサッカー競技を紹介するパネルの展示や早稲田大学ア式蹴球部からの出展があった他、車椅子バスケやハンドバイクなどの体験会が催されるなど、他の障害者スポーツ団体との連携が見られた。

 24日開催の5位決定戦と決勝戦は、500名ほどの会場がほぼ満杯となる盛況だった。北側スタンドには青のユニフォームを着た100名ほどの応援団が横断幕を掲げて応援しており、健常者の日本代表チームの応援を彷彿とさせた。日本代表が戦った5位決定戦のハーフタイムには、日本代表応援団の音頭により、観客が手を取り合って日本代表にエールを送る場面もあった。

第3回 ワークショップ

日本財団パラリンピック研究会が2014年9~10月に日本、アメリカ、オーストラリア、韓国、ドイツ、フランスの6ヵ国で実施した「一般社会でのパラリンピックに関する認知と関心」調査から得られたデータを提示し、以下の点を中心に概要報告を行いました。
調査結果データは、こちらをご参照ください。

①パラリンピックに関する日本での認知度は98.2%で、世界トップレベル。ただし、詳しい内容を知っている人はごく少ない。
②90.1%の人がパラリンピックのメディア報道に触れた経験を持つが、観戦競技は車いすバスケットなど少数に限定される。
③パラリンピック以外の障害者スポーツを直接観戦した経験のある人は、他国でいずれも10%以上にのぼるのに比して、日本では4.7%と少ない。
④2020年東京パラリンピック大会では、61.3%の人がメディアの中継による競技観戦を、また27.0%の人がボランティアとして参加することを希望。会場で直接観戦したい人はオリンピック観戦希望者の約半分にとどまるが、中継と合わせると76.7%が観戦を望んでいる。
⑤51.1%の人が東京パラリンピックを機に「障害のある人のスポーツ機会がふえ環境が充実すること」を期待。「公共施設等のバリアフリー化進展」への期待も48.9%と高い。これに、「障害者福祉に関する理解促進」が次ぎ、「日本のメダル獲得数増加」への期待は4つの選択肢のうち最少の38.5%にとどまる(複数回答可)。

以上の報告に対して、有識者より以下のようなコメントがありました。藤田先生コメント時.jpg
・障害者スポーツに関する経験を持つと、関心が高まり、価値観が変わることが調査結果から読み取れる。学校で体育の授業に取り入れるなど障害者スポーツに触れる機会を増やすこと、また、複雑なルールをわかりやすく説明し、パラリンピック競技の面白さを簡潔に伝えることが課題となる。「伝道師」の役割が、スター選手の存在に並んで重要。さらに、パラリンピック教育という柱を立て、理念、歴史、そして同時に「負の歴史」を教育し、パラリンピック・リテラシーを高めていくことも必要。
・アスリートの高いパフォーマンスに対するリスペクトを原点とするパラリンピック競技の報道が望まれる。インターネットによる報道には拡充の余地が大きい。
・2020年のパラリンピック開催にあたり、メダルの個数よりも「社会変化」に一層の期待が寄せられていることが明らかになった。パラリンピックは日本社会を変えるツールとして、オリンピックに勝る力がある。
・2020年に向け、日本のみならずアジアにおける障害者スポーツの振興を図るべき。
・東京大会に向けた現在の大きな勢いを、2020年以降につながる流れとできるよう、競技団体の組織面・広報面の強化に取り組むことが課題。

調査結果については、こちらをご参照ください。

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日本財団パラリンピック研究会
国内外一般社会でのパラリンピックに関する認知と関心
調査結果報告

パラリンピック研究会では、社会でのパラリンピックに関する認知と関心の度合いを把握するため、2014年9月から10月に笹川スポーツ財団の協力を得て、国内およびドイツ、アメリカ、韓国、フランス、オーストラリア、計6ヵ国で、世論調査を実施しました。
国内大手調査会社および同社の海外提携企業にアンケート・モニターとして登録される人々、国内で1500人、海外の5ヵ国で各500人、合計4000人(回答者の母数は6ヵ国合計で1450万件)にインターネットで回答いただきました。

調査結果の概要を以下にご報告します。
調査結果の詳細データをあわせてご参照ください。

調査結果データ(PDF)

1.日本におけるパラリンピックの認知・関心と国際比較

(1)認知度

日本では、ほぼ全員が「パラリンピックを知っている」。
「内容を知っている」人(77.1%)と「名称を見たり聞いたりしたことがある」人(21.1%)を合計すると98.2%が「パラリンピックを知っている」。
20代男性では7割弱とやや低いが、年齢に比例して認知度が上がり、女性が男性よりどの年代層でも高い認知度を示す。
海外では、ドイツ、フランスで95%以上がパラリンピックを認知する一方、アメリカおよび韓国では7割台と低い。特にアメリカでは内容を知っている人が2割台にとどまる。
海外各国との比較から、日本でのパラリンピックの認知度は世界トップの水準にあると言うことができる。

一方、どの種類の障害者が参加できるかについて正しい知識を持つ人は、国内では全体の0.5%に過ぎない。過半数の人が聴覚障害者に参加資格があると誤解するなど、正しい知識の普及には至っていない。なお、知的障害の参加が認知されていないことには、シドニー(2000年)で不正があった後、ロンドン(2012年)の一部競技で復帰するまで参加がなかったことも影響しているかもしれない。
海外でも、どの障害を持つ人が参加するかを正しく理解する人の比率は軒並み低い。アメリカでは視覚障害が含まれないという誤解、フランス、韓国、ドイツでは日本と同様に聴覚障害が含まれるという誤解が多いなどの傾向がみられる。

(2)メディアを通じたパラリンピック経験

日本では、メディアを通してパラリンピックの報道に触れたことのある人が9割に達する。半数近くの人がテレビでパラリンピックの中継を見たことがある。
テレビのニュース・特集番組等と新聞・雑誌による報道が数値を押し上げている一方、インターネットでの中継等動画の視聴経験者数は6ヵ国平均の半分程度と低調。
能動的な接触であるというインターネット視聴の特徴を踏まえると、国内のメディア接触には他国に比べて積極的な姿勢がやや弱い傾向があると言える。
海外では、韓国、オーストラリア、アメリカで、インターネットでの接触経験者が多い。
韓国ではインターネット中継に加えて、新聞および動画以外のインターネット記事による情報入手も、6ヵ国中で最多。
アメリカ、ドイツ、オーストラリアでは、いずれのメディアでもパラリンピックに接した経験のない人が多いが、若年層でインターネットないしは新聞への接触度が比較的高いという特色もある(詳細データ略)。

一方で、中継を通じて観戦される競技は、車いすバスケットなど一部に限られる。パラリンピック競技の半数以上(25競技中14競技)では、観戦経験のある人が1割未満にとどまる。
海外を含む6ヵ国平均で観戦経験の多い競技は、車いすバスケットボール、陸上、水泳、車いすテニス、アルペンスキーの順。日本では、車いすテニスが車いすバスケットを上回る。他国に比べて中継が少ない競技は、ウィルチェアラグビー、卓球、馬術、ボート、パワーリフティングなど。
韓国のアーチェリー、アメリカの自転車、韓国およびアメリカの卓球の高さが目立つ。

(3)障害者スポーツの直接観戦経験

日本でパラリンピック以外の障害者スポーツを直接観戦した経験のある人は5%未満。他国ではいずれも10%以上にのぼるのに比して、極端に少ない。

2.2020年東京パラリンピック大会への国内の関心

(1)観戦希望

6割強の人がメディアによる中継の観戦を希望している。
この数値はオリンピックの中継観戦希望を上回るが、他方で、会場で直接観戦したい人はオリンピックでの希望の約半分程度にとどまる。
若い人に直接観戦希望が強く、年配者が中継を期待する傾向は、オリンピックと共通。

(2)ボランティア参加意向

6%の「是非」に「できれば」を加えると27%の人が、ボランティアとしてパラリンピックに参加することを希望している。「是非」行いたいという回答では、男性が女性を上回る。
20代の男女が特に高い参加意向を持つ一方、40代では男女とも参加意向が低い。
オリンピックとパラリンピックの両方でボランティアを行いたい人が全体の4分の1。いずれかでという人はパラリンピック、オリンピックとも少数(詳細データ略)。

(3)期待すること

過半数の人が東京パラリンピックを機に、「障害のある人のスポーツ機会がふえ環境が充実すること」を期待している。「公共施設等のバリアフリー化進展」への期待も48.9%と高い。これに、「障害者福祉に関する理解促進」が次ぎ、「日本のメダル獲得数増加」への期待は4つの選択肢のうち最少の38.5%にとどまる(複数回答可)。
相対的にメダル獲得への期待が高い20代の回答でもやはり、「障害者のスポーツ環境の充実」と「公共施設等のバリアフリー化」が「日本のメダル獲得数増加」を上回る。
「障害者のスポーツ環境の充実」と「公共施設等のバリアフリー化」を期待する女性は、男性より1割前後多い。
バリアフリー化への期待は年代を追って高まる。
他方、「期待することは特にない」という回答が2割を超え、関心の薄い層が一定程度存在することが示されるが、これには、回答者の趣味嗜好との極めて高い相関関係がみられる。外に出て活動する気持ちの強い人ほど、パラリンピックとそれがもたらす社会変革に強い期待を持つと言うことができる(詳細データ略)。

本件調査報告の内容を利用・転載する場合は、日本財団パラリンピック研究会の調査によるものであることを明記のうえ、掲載部分の写しを同研究会にご提供ください。

お問い合わせ

日本財団パラスポーツサポートセンター パラリンピック研究会
2022年1月1日より団体名(旧 日本財団パラリンピックサポートセンター)が変更となりました

所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂1-3-5 赤坂アビタシオンビル4階
Tel: 03-5545-5991
Fax: 03-5545-5992
E-mail: research [at] parasapo.tokyo 

メールにてお問い合わせ頂く際は、お名前、ふりがな、ご所属、お電話番号のご記入をお願いします。
なお、Email欄に記載した[at]は@に置き換えてください。