第4回 ワークショップ

第4回 2014年12月11日
「情報アクセシビリティに関する現状の課題と、パラリンピックに向けた展開」

情報通信技術の国際的標準化に向け、国際連合の専門機関である国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門が、携帯電話の無線インターフェイスおよび電話回線によるデータ通信の標準化・共通化ルール策定などに取り組んでいる。国内では、標準開発機関として政府に認証された情報通信技術委員会が、対処方針を総務省に提案し、審議を行っている。

具体的な施策と進捗状況を紹介する。聴覚障害者向けの電話リレーサービス、緊急通報用インターフェイスなどはすでに実用化されており、汎用化に向けガイドラインの策定が進められている。自動音声認識と翻訳を一体化した自動音声翻訳アプリについては、成田空港でサービス運用が行われている。将来的には自動翻訳技術を用いたコミュニケーションが世界中で可能になるが、少なくともアジアでは2020年までの実用化が目標。視覚・聴覚障害者に有効なIPTVについては、国内各メーカーがすでに商品化し幅広く活用されているが、さらに低コスト化に向けた実験などが進められている。ITUのアプリのコンテストなどを通して国際的にも活用が促進されている。

情報アクセシビリティ向上には低コスト化が重要。日本ではコストが高いためテレビ番組の字幕・手話通訳サービスが進んでいない。遠隔地での第三者による、あるいは、障害当事者による字幕作成で、低コスト化を図り、IPTVの活用サービスを広げたい。情報アクセシビリティ向上が高齢化社会に向けたニーズとして認識されて、社会制度によるサポートを得られれば、サービスは普及する。

前出の電話リレーサービスは聴覚障害者のためのサービスだが、手話を使う人は聴覚障害者の2割弱に過ぎない。また、視聴覚障害者の情報アクセス・デバイスとして点字ディスプレイが市販されているが、視覚障害者で点字を読める人は1割程度。点字を使えない多くの視覚障害者はスクリーン読み上げソフトを利用する。点字でも、状況は複雑で、例えば聾盲者(視覚聴覚障害者)が盲ベースの場合は指点字、聾ベースの人は触点字と別れる。障害の種類・程度により、障害者のコミュニケーション手段は多様なので、それぞれのニーズに合った情報アクセシビリティ・サービスが必要である。