第11回 ワークショップ

第11回 2015年6月19日

「障害のある人にとっての競技場のアクセシビリティ--観客として、競技者として--」

会場の様子.JPG写真:会場の様子

今回の講演の目的は、パラリンピックで行われる競技を対象に、障害のある人が観客として、あるいは競技者としてスポーツに参加する場合の競技場の利便性を調査し、東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境の整備に関して、研究結果に基づいた提言を行うことにある。

障害者権利条約は、障害のある人の人権保障に関するものである。特に重要なのは他の者との平等という観点である。障害者に配慮したアクセシビリティとはあくまでも彼らの権利であって、健常者の思いやりからなされるものではない。そういう意味でバリアフリー法は施設のハード面の規定はあるが、「他の者との平等」という理念を欠いているという点で大きな問題がある。

川内美彦さんと前田有香さん.JPG写真:川内美彦さん(写真左)とパラリンピック研究会研究員(写真右)

国際パラリンピック委員会(IPC)は、アクセスは基本的人権として、その達成のために車いす席などの整備に関する規定を設けている。2020年に向けて規定に合わせた整備を行っていく必要があるが、欧米主要国と比べ日本の状況はだいぶ遅れており、観客席のアクセシビリティに関する規定そのものがない。したがって観戦時の視線=サイトラインの確保も、日本ではほとんど配慮がなされていない。

質疑応答.JPG写真:質疑応答の様子

また、障害者スポーツ競技者の施設利用の調査を行った結果、バリアフリーであること、障害者に配慮した駐車場が整備されていることなどを重視していることがわかった。また、多くの競技者が自動車で1時間以上かけて練習場に来ており、場所の確保に苦労していることが明らかとなった。今後は一般のスポーツ施設でも障害者が利用しやすいよう、ハード面、ソフト面での改善が求められる。