第26回ワークショップ

2017年10月25日
「スポーツ界の転倒予防-フェアプレイ精神と共生の思想を守り育む-」
講師:一般社団法人スポーツ・コンプライアンス教育振興機構理事長 武藤芳照氏

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、スポーツが持つ価値に対して社会からの期待がより一層高まりつつある。中でも、健康的で活力のある社会形成のためにスポーツが果たす役割は大きく、これは日本が抱える少子高齢化問題とも深く関連してくる。

 高齢者が寝たきり、要介護、そして死亡に至る事態を招来する原因の一つとして転倒がある。転倒骨折を防ぐことは、超高齢社会を支えることに繋がり、その予防策としてスポーツ・運動は重要な鍵となっている。

 スポーツは、国民の健康を守り社会を明るくする存在であるとしてその価値が認められている一方、残念ながらスポーツ界には様々な不祥事、違法行為、コンプライアンスに関わる問題等が発生していることも事実である。

 そもそもスポーツの原点は「遊ぶ」ことにある。子どもにとって、スポーツは遊びながら経験するものであった。しかし現代社会においては、本来の遊びとしての意味が衰退し、「競闘」という意味が優位に立っているといえよう。このような意味変容により、スポーツが勝利至上主義に陥ることを引き起こし、様々な場面での歪みを生じさせていると考えられる。ドーピング、間違ったトレーニングによる事故、部活動における体罰等は、スポーツに歪みが生じた顕著な事例である。特に、成長段階にある子どもたちに痛みを我慢することを強要し、トレーニングの量で成果を図る風潮は改善されなければならない。

 スポーツは「薬」と同様であると考え、質と量を守る大切さを、指導者だけではなく子どもたち自身も理解する教育が求められる。正しい体の理(ことわり)を知るための「身体教育」は、国際舞台で活躍するアスリートのみならず、広く国民に広めなければならない基本的な教育であろう。

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