第32回ワークショップ

2019年2月19日
テーマ:「ジャカルタから東京へ~アジアパラ競技大会報告及び2020東京パラリンピック競技大会に向けての提言」
講演者:ラジャ・サプタ・オクトハリ氏 (インドネシアアジアパラ競技大会組織委員会会長)
大前千代子氏(アジアパラ競技大会 日本代表選手団団長)
モデレーター:望月敏夫氏(日本障がい者スポーツ協会評議員、日本オリンピック・アカデミー理事)

 アジア地域における障がい者スポーツの総合競技大会であるアジアパラ競技大会が,2018年10月6日から13日までインドネシアのジャカルタで開催された。
インドネシア2018アジアパラ競技大会(以下「2018アジアパラ大会」と略す)の組織委員会が設立されたのは,大会開催の約11か月前であった。大会が成功に終わった背景には、限られた期間の中でも迅速に対応にあたった組織委員会のメンバーの存在があった。

 今大会の準備において一番の課題となったのが、ジャカルタ市内の交通渋滞への対応であった。選手の輸送は、大会全体の運営にも関わるため、選手移動用バスが通る専用レーンの整備や警察による誘導などのあらゆる策を講じた。
しかしながら選手村から競技場まで約1時間を要することもあり、渋滞の状況によっては大会スケジュールが当日になって変更せざるを得ないケースもあった。

 他方、今大会を開催したことによって多くの社会的なインパクトを与えることができたといえる。ボランティアの育成は、今大会の重要なレガシーのひとつである。これまで、インドネシアは、障がい者スポーツの国際大会の開催経験が乏しかったため、ボランティアの研修を事前に十分に行う必要があった。すなわち、選手たちのサポートの仕方、マナーや国際的なタブーなどをしっかりと学んでもらうと同時に、大会の顔としてインドネシアの文化をいかに発信するのかという観点からも研修を行った。
 また、2018アジアパラ大会は、インドネシア社会における障がい者に対する認識変容をもたらす第一歩となったともいえる。大会のテレビ中継や障がいのあるアスリートのメディア露出、テレビ番組における手話の導入など、小さな変化を今後につなげることが重要である。

 様々な課題に直面したものの、アジアパラリンピック委員会に加盟するすべての国家が参加するという記念すべき大会となったことを踏まえると、今大会は、アジアにおけるパラリンピック・ムーブメント推進の一助となったといえるだろう。さらに、開催国の国家元首(ジョコ大統領)が開会式に出席したこともアジアパラ大会史上初めてであった。パラリンピックの発展が、アジアにおける平和に結実するような視点を持ち続けることが重要である。

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