第35回ワークショップ
2019年10月3日
テーマ:スポーツにおけるカナダの成功
講演者:Todd Nicholson(カナダOwn The Podium会長)
アスリートのパフォーマンスは、オリンピック・パラリンピックともに年々進化をしている。この背景には、アスリートの身体機能の発達のみならず、トレーニング技術や用具の進化がある。Own The Podiumでは、競技パフォーマンスの向上に資する様々なリソースに、すべてのアスリートがアクセスできるシステムの構築を目指している。
カナダでは、Long Term Athlete Development(長期競技者養成)というプログラムを基に国民のスポーツ参加を奨励している。年代や性別を問わず、生涯に亘ってスポーツへの多様な関わり方が可能となるよう、地域のスポーツクラブからナショナルレベルまで包括的に捉えているのが特徴といえる。その中でも、Own The Podiumが担うのは、州レベルからナショナルレベルに至るエリートスポーツ選手の育成に特化した範囲となっている。
カナダのハイパフォーマンス事業の特徴の一つとして、次世代アスリートへのサポートが充実している点がある。Own The Podiumでは、科学的エビデンスに基づいて各競技団体やアスリートに対する公的資金の投資配分について提案を行っている。このような科学的分析は競技成績を基に行われるが、その場合、競技成績を上げられていない選手は資金や各種サポートの獲得機会を失ってしまう。Own The Podiumでは、複数年に亘って選手のデータを蓄積、分析を行うことで、将来性の高いアスリートを見出し、追加的なサポートの実施提案を可能としている。次世代アスリートの育成の成功が、5年後10年後のカナダの成功に帰結するのである。
カナダは、オリンピックのみではなく、パラリンピックにおけるアスリートの活躍も等しく重要であると考えている。そのため、Own The Podiumでは、オリンピック選手とパラリンピック選手へ同等の強化育成支援を行っており、これは国際的にも稀有な事例である。Own The Podiumは、優秀なコーチやテクニカルリーダーの育成、メディカルサポートの充実化、快適な練習場所の確保など、選手たちが持続的に活躍できる環境づくりを推進している。
オリンピックとパラリンピックのために別々にサポートシステムを構築した場合、非常に多くのコストを投資しなければならない。カナダにおいては、コーチやテクニカルリーダー、施設に至るまで様々なリソースはオリンピック選手とパラリンピック選手の共有財産であり、それがコスト削減やリソースの有効活用につながっている。そのため、オリンピック選手とパラリンピック選手の両方を指導しているコーチや、練習場所を共有する選手も多く存在している。
国際競技大会における選手の活躍は、国民の誇りであり、国を一つにまとめる力となる。そのため、一つ一つのメダルが持つ価値が非常に高いと言える。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、カナダチームは着々と準備を進めている。開催国となる日本にも、これを機会として社会的な変化が起こることを願う。