第30回ワークショップ

2018年7月31日
テーマ:「パラリンピックと放送に関する研究」
司会:藤田紀昭氏(日本福祉大学)
コメンテーター:小淵和也氏(笹川スポーツ財団)
調査報告:中山健二郎(日本財団パラリンピックサポートセンターパラリンピック研究会)

 平昌パラリンピック大会のテレビ報道が、障がい者の意識や生活にどう変化をもたらしているのかを明らかにし、2020年の東京パラリンピック大会におけるテレビ放映のあり方および課題を検討するための基礎的な知見を蓄積することを目的として、日本財団パラリンピックサポートセンターとNHK放送文化研究所が共同調査を行った。本ワークショップでは、当該調査の結果報告とともに、そこから導かれたパラリンピック放送に関する論点や課題について議論が行われた。

 当該調査は、平昌パラリンピック大会終了後の2018年3月20日~26日に、ジーエフケー・インサイト・ジャパンにアンケート・モニターとして登録される1750名の障がい者と500名の健常者の男女を対象として、インターネットにて回答を得た。調査の結果、平昌パラリンピックに対する関心や視聴積極度、東京パラリンピック大会に対する期待等は、障がいの種別によってその傾向が異なることが明らかとなった。具体的には、当該調査において全体として、身体障がい者は、パラリンピック視聴に対して高い関心や期待、積極的な視聴態度がみられることに対して、発達障がい、知的障がい、精神障がい者については相対的にパラリンピックに対する関心や期待、視聴積極性が低い傾向にあった。これらの結果から、ラリンピックに対する障がい者の視聴状況や態度は、一括りに障がい者の傾向として論じるのではなく、障がい種別を始めとした個々人の文脈に応じてより細分化した分析が必要であることが示唆された。また、障がい種別の他、他者との関わり、外部への志向性、スポーツ活動状況などが、パラリンピック視聴の積極度の間に連関が見られることが推察された。

 ディスカッションにおいては、パラリンピック放送に関して調査結果から読み取れる論点や課題について議論が行われた。パラリンピックへの関心が主にパラリンピック大会前に高まっていることに関しては、オリンピック・パラリンピックを一体化させたプロモーション戦略への評価や、パラリンピック大会期間中にも関心を継続して高めていく方策としての「ヒーロー・ヒロイン」の必要性などが議論された。また、「ヒーロー・ヒロイン」を作ることで話題が盛り上がる半面、障がい者にとってスポーツエリートとしてのパラリンピアンが遠い存在として位置づけられてしまう懸念などについても指摘がなされた。さらに、パラリンピック報道の情報量を増加させることの難しさや、競技結果が芳しくない状況に対して批判的な報道ができるのか、選手としての凄みをメディアがどのように伝えていくのかなどについて、メディア側や競技団体側からの視点も交えながら議論が展開された。

IMG_5701.JPGのサムネイル画像